【レポート】ダンカン登壇! 映画『火の華』公開記念舞台挨拶

公開3日目となる11月2日(日)に行われた公開記念舞台挨拶では、主演の山本一賢さん、小島央大監督、そして前日の舞台挨拶はスケジュールが合わず登壇がかなわなかった出演者のダンカンさんが登壇。新潟での花火師修行や撮影の日々を振り返りました。ダンカンさん流ジョークが飛び交い、終始、あたたかい雰囲気に包まれながら進んだ舞台挨拶の様子をお届けします。

開口一番、出演の決め手を訊かれたダンカンさんは「小島監督はね、最終学歴が東京大学建築学科。これは面白い監督がいるなあ、と思って。こういう人はどういう映画を撮るんだろうと思い(出演を)決めたんですけど、どうやら卒業証書というのが偽物らしくて」とジョークを飛ばすと、会場はどっと笑いが起き、和やかな雰囲気で舞台挨拶がスタート。

ダンカンさんをキャスティングした経緯について小島監督は「花火工場のシーンは、実際にある新潟の小千谷煙火さんで撮影し、脚本段階から取材をさせていただきました。映画を見ていただいた通り、花火づくりには色んな工程があって、いろんな職人の方がいて、工程によって作っている方の性格が見えてくる。花火工場全体も含めて色があるし、僕の印象では、小千谷煙火さんは遊び心がある花火を上げていて、その一方で、土台には火薬への尊厳を持ってらっしゃる。そのバランスというか、厳しく真面目に火薬というものを見つめつつも、その火薬を使って遊び心のある花火を作っているのが小千谷煙火さんだったんです。そんな中で、自ずと花火工場の雰囲気が、映画の伊武(雅刀)さんをはじめとする職人たちにどんどん転移していって、そのなかで“星”を作る役柄に一番の原料を作るという意味合いで重要かつ、工場長というトップの役を誰が担うか考えたときに、伊武さんとのバランスも含めて、ダンカンさんがとても良いんじゃないかと思い、声をかけさせていただきました」と説明。

ダンカンさんが演じたのは、山本さん演じる主人公の島田東介が身を寄せる花火工場「藤井煙火」の工場長、仲川 兼役。工場の中で仲川は、花火の“星”と呼ばれる、火や煙を出しながら燃える火薬の粒を作る重要な役目を担っている。

“火薬”を扱う役どころに「緊張感しかない」とダンカンさん。「撮影に入る一ヶ月前かな、実際に花火を作るところから練習を重ねて。火薬を調合する大切な役目でして、火薬をどれぐらいの割合で入れるのか決めて、大きな金たらいに4、5種類の粉を混ぜ合わせて、細かくふるいにかけて、ゆっくりきめ細かくしていって、最終的に金たらいにはけで戻すと、花火の火薬が完成するんです。金たらいを垂直に落とすと、そこで静電気が起きて、爆発すると言われましてね。すごく緊張しながら、横にすーっと置いて静電気が起きないように、花火の本職の職人さんたちにつきっきりで教えていただきました」と述懐。「やっと完成までいって、ほっとしてタバコを取り出して吸おうとした瞬間に、めちゃくちゃ怒られました(笑)」と明かし、会場からは大きな笑いが巻き起こりました。

続けて小島監督は「花火工場での撮影は、もちろん美術で作る部分もあるんですけど、手触りだったり、現場の匂いや色だったり、リアルでないと出せないものがあるというところで、職人の皆さんとどのように撮影すればいいか相談して。なかなかの緊張感の中で、iPhone13は爆発するから(持ち込んだら)ダメだと言われて、だったら14だったらいいのかな、なんて(笑)。カメラのバッテリーから全てチェックしたうえで撮影したので、キャスト、スタッフともに緊張してたなと思いますね」と賛同。「花火を作ることによって職人の思いが少しでも伝わればいいかなと思い、キャストの皆さんには練習してもらいましたね」と。

ここで口数の少ない山本さんに対して、ダンカンさんよりツッコミが。山本さんは「緊張するんですよね。こんな(大人数の)人に見られることが慣れなくて…。東介は喋らない役だから、(イメージを)壊したらまずいかな」と漏らすと、ダンカンさんも「実はね、不思議なことに俺も緊張してます」と賛同。「もちろん舞台挨拶は何十回も40年以上やってるから、皆さん映画を見るのが本当に好きなんだろうな、と真剣なお客さんばっかですよね。今日は本当のお客さんだな、と緊張している。本物の映画だから、本物のお客さんが来てくださったのかなと感動さえ覚えています」と本作を称賛。

約1年の延期を経て公開を迎えた本作に対して、ダンカンさんは「本来だったら、これだけの本物の映画をね、1年前にお届けできたはずなんですよ。事情があって、“火の華”が“火の車”になってね。それもさらに続きがあって…でもこの2人の才能があるから、許すよ!」と共同で企画・脚本を務めた2人を激励。「地元の方々が協力してくれる中で我々撮影させていただいたのに、この映画が流れないとなるとその人たちを裏切ってしまうことにもなるので、本当に公開になって嬉しいんです」と喜びを語りました。

苦労した撮影の1つに、煙草の火で自ら着火して打ち上げ花火を投げ込むシーンを挙げた山本さん。「本当に火薬を投げて、打ち上げる。あんなに早く、(着火から)打ち上がるとは思わなかったから。音で耳から血が出たんですよ。先に言っておいてほしかったですね」と笑いながら語ると、ダンカンさんから「味気ない裏話は隠してくださいよ!」とツッコミが入り、会場は三度笑いが。

このシーンについて「30年前ぐらいまでは投げて打ち上げてたらしいんですけど、今は安全スイッチに切り替わったんです。現場で、小千谷煙火の瀬沼社長から(投げ込む打ち上げ)を教えていただいて、まさにその形がかっこよかったんですけど、まわりにいた若い職人たちはやったことがないので、すごく羨ましそうに山本さんを見てたのが印象的でしたね」と小島監督。

中盤、ダンカンさんから「一番好きなシーンはどこ?」と訊かれた2人。小島監督は「見るたびに違うんですけど、僕がぐっとくるのは、島田のラストシーンですかね」と答えると、ダンカンさんは「そういうときはダンカンさんのシーンですって言うんだよ」と鋭いツッコミ。山本さんは「ダンカンさんの…」と答えると、「いいよ! もう、俺の話は」と笑いながら返した。

仲川が島田に諭し、“火薬”の在り様を体現しているセリフ「火薬様は丁寧に扱えよ」について、ダンカンさんは「俺も本当に気持ちから出ている言葉になってましたよね。生業にしている人たちを目の前にしているわけだから、火薬は危険だけど最高のものであるというのを現場で感じてた」と回想。それに応える形で、「セリフの少ない映画だと思うんですけど、シーンの中でポツリポツリと。それが一つずつのセリフがずしーんとくるようにしないといけないなと思っていたので、ダンカンさんが魂を込めてくださって、名シーンだなと思います」と小島監督。

花火師キャストが集結した藤井煙火の宴会シーンについて、山本さんは「本当に飲んでたもんね」と暴露。ダンカンさんは「(あの時の撮影)覚えてる?! 怪しいな〜」と返しながら、「新潟(での撮影)は楽しかった。すべてが楽しかったね。(撮影の日々が)一瞬で、本当のことだったのかな、みたいな。花火みたいなもんですね」としみじみ振り返り、「映画はやはり1人でも多くの方に見ていただいて、広がって大きくなっていくものなので、今日見て本当に良い映画だなと思った方は、足を運んでいただけるようまわりに声をかけてください」と呼びかけ、舞台挨拶を締め括りました。

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